第1章の試験に必ずと言っていいほど出題される薬害の歴史その1
「サリドマイド訴訟」
病名:サリドマイド胎芽症
症状:出生児に四肢欠損、耳の障害等の先天異常
原因:サリドマイド製剤S体による副作用
経緯:催眠鎮静剤等として販売されたサリドマイド製剤を妊娠している女性が使用したこと
サリドマイドの主作用・副作用について、S体R体を逆にして出題、年号をずらして出題などの理不尽な変化球に遭ったりします。
問題解決後の体制改善にも注目です。
サリドマイド訴訟
催眠鎮静剤等として販売されたサリドマイド製剤を妊娠している女性が使用したことにより、出生児に四肢欠損、耳の障害等の先天異常(サリドマイド胎芽症)が発生したことに対する損害賠償訴訟である。
- 1963年6月 製薬企業を被告として提訴
その翌年 - 1964年12月 国と製薬企業を被告として提訴
10年争う - 1974年10月 和解が成立
製薬企業を相手に争っていたが、その一年半後に国にも責任があるとして、被告に国も加わって10年争い、和解。
なぜサリドマイドが胎児に影響したのか
サリドマイドは催眠鎮静成分として承認されたが、副作用として血管新生を妨げる作用もあった。
(その鎮静作用を目的として、胃腸薬にも配合された)
主作用:催眠鎮静成分
副作用:血管新生を妨げる作用
胎児は器官を作るために細胞分裂が活発に行われますが、血管新生を妨げる副作用が催奇形性につながってしまったのです。
細胞分裂が正常に行われず、器官が十分に成長しないことから、四肢欠損、視聴覚等の感覚器や心肺機能の障害等の先天異常が発生する。
血液ー胎盤関門を通ってしまったの?
その通り。サリドマイドは胎児に移行して血管新生を妨げてしまったんだ
光学異性体 S体・R体
サリドマイドにはS体・R体の、対になる光学異性体というものがある
血管新生を妨げる作用はその一方のS体の方だけが持っていて、鎮静作用はもう一方のR体の方だけが持っているんだ
じゃあS体を取り除くことってできないの?!
R体だけでいいじゃん!
誰もが思うだろう
でも、できないんだ
サリドマイドである以上、R体とS体は両方存在していて、体内で相互に入れ替わるものなんだ
R体のサリドマイドだけを取り出して製剤化しても、体内でS体になったりR体になったりするので催奇形性は避けられません。
サリドマイドの歴史
1957年
西ドイツ(当時)で販売が開始
67年前かな
結構昔だね
1958年1月
我が国で販売
日本で売られ始めたのは
その翌年なんだね
1961年11月
西ドイツのレンツ博士がサリドマイド製剤の催奇形性について警告を発し、西ドイツでは製品が回収されるに至った
レンツ博士は偉大!
レンツ博士ありがとう!!
販売が始まってから発見されるまでの4年間、何もなければよかったんだけど…
我が国では…
同年12月に西ドイツ企業から勧告が届いており、かつ翌年になってからもその企業から警告が発せられていたにもかかわらず、出荷停止は1962年5月まで行われず、販売停止及び回収措置は同年9月であるなど、対応の遅さが問題視された。
はあ?!
何やってんの我が国!
1961年12月~1962年5月
(勧告が来てからの約半年間)
1962年5月にやっと出荷停止。
勧告が来てから約半年も放置なんて
1962年5月~1962年9月
(出荷停止になってからの4か月間)
1962年9月にやっと販売停止・回収措置
出荷停止から4か月後…ありえん
出荷は止まったのに、普通にお店に並んでたのー?!ぞぞぞぞぞ
それは国にも責任があるよ!
サリドマイドによる薬害事件は、我が国のみならず世界的にも問題となったため、WHO加盟国を中心に市販後の副作用情報の収集の重要性が改めて認識され、各国における副作用情報の収集体制の整備が図られることとなった。
過去の事例から学ばないといけない
副作用情報を集めることの大切さ、その体制が見直されるきっかけとなったんだ
ちょっとでも問題があったらすぐに回収することも大事だね!
まとめ
- サリドマイドってなに?
鎮静成分。胃薬にも含まれている。 - 起こったこと
妊娠中の女性が服用し、胎児に先天異常が見られ、訴訟問題となった - 原因
サリドマイドの副作用 - もっと詳しく
S体が胎児の血管新生を妨げ、器官の成長を不十分にした。 - 胎児に移行する成分だったの?
その通り。血液ー胎盤関門を通過してしまった。 - それを見つけたのは誰?
西ドイツのレンツ博士 - 国や企業の対応は正しかったのか
正しい正しくない以前に、対応が遅すぎた
- 1957年 西ドイツでサリドマイド製剤が販売された。
- 1958年1月 わが国でも販売が始まる
. - 1961年11月 西ドイツのレンツ博士が催奇形性を警告
西ドイツでは製品が回収される
. - 1961年12月 我が国に西ドイツ企業から勧告が届く
.
この約半年間、我が国は何をやっている…
. - 1962年5月 わが国で出荷停止(おそい!)
.
この4か月間、我が国はなにをやっている…
. - 1962年9月 販売停止及び回収措置(おそい!)
. - 1963年6月 訴訟が始まる
.
その一年半後…
. - 1964年12月 国も被告として追加された
.
10年後…
. - 1974年10月 和解が成立した
結果、世界的に問題となった。
WHO加盟国を中心に市販後の副作用情報の収集の重要性が改めて認識され、各国における副作用情報の収集体制の整備が図られることとなった。
WHO=世界保健機関。健康を専門とした国際的な機関
鎮静成分。いじわるなひっかけ問題。
鎮静成分として承認され、胃腸薬にも使用された。
血管新生を妨げられる→細胞分裂が正常に行われなくなる→器官の成長が不十分
結果:胎児の四肢欠損・視聴覚機能・心肺機能などの先天異常
製薬企業が提訴された。
初めは製薬企業のみ、その一年半後に国も。両方が提訴された
体内で交互に入れ替わるので分離させても意味がない
警告から約半年後に出荷停止。出荷停止から4か月後に販売停止・回収措置。
わが国の対応の遅さが問題視された。
結果、副作用情報の収集体制の整備が図られることとなった。
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